ASEAN諸国は、経済の急成長と共にエネルギー消費量が急増している地域である。地球温暖化問題への対策を進める上で、このような地域における省エネを推進することは、重要な課題である。このようなエネルギー消費量の急増に対して、ITを用いた省エネ(グリーンIT)は大きく貢献できると考えられる。
本事業は、経済産業省からの受託事業として、ASEAN諸国の産業界に対して、ITを用いた我が国の最新の省エネ技術及び製品によるソリューションを紹介・導入し、省エネを推進することを目指して、「 ITを活用した省エネルギーの実現に向けた診断」を実施した。
データセンタ、公共施設・ビル、プラント・工場等に省エネ専門家を派遣し、我が国の最新ITを利用した省エネの実現にむけて、各種設備の診断や最適化計画の立案、改善効果の予測等を行いました。
本事業のうち主な以下の4つの事業について紹介します。
ASEAN諸国の産業界に対して、我が国の最新の省エネ技術及び製品によるソリューションを紹介・導入することを目指して、グリーンIT省エネ診断を実施した。ASEAN諸国において省エネ対策が必ずしも進んでいないデータセンタや公共施設、プラント・工場等を対象に、エネルギー消費削減の可能性をITの活用にて定量的に評価した後、我が国の最新ITに基づく省エネ技術や省エネ製品によるソリューションが導入可能か否かを診断した。
診断は、平成21年度の2ヶ国4ヶ所から倍増し、平成22年度はデータセンタ2ヶ所(ベトナム、シンガポール)、公共施設4ヶ所(インド、シンガポール、中国)、プラント・工場2ヶ所(ベトナム、中国)の合計4ヶ国8ヶ所を対象とした(表1-1)。また、診断によって得られた省エネポテンシャルを表1-2にまとめた。
なお、診断先8件のうち3件については契約上の理由により、名前を非公表としました。
診断先 | ベトナム最大のITサービス企業の子会社であるデータセンタ事業者 |
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診断担当企業 | IDCフロンティア(株) |
診断概要 | ・データセンタの空調装置における省エネ診断、PUE及びDPPE計測を実施 -サーバルーム内の空調機の稼動調査、温度調査 -負荷側のラックでの消費電力の調査 -熱解析シミュレーション |
診断結果(提案) | ・サーバルームは日本と比較して、過冷却な傾向 ・空調機の適正運用、コールドモール導入により省エネが可能 ・PUEは1.77、DPPEは0.19となった |
診断先 | シンガポールの大型データセンタ |
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診断担当企業 | NTTデータ先端技術(株)、高砂熱学工業(株) |
診断概要 | ・PUE及びDPPE計測、空調気流調査、熱流体解析に基づく省エネ調査 -PUE調査:関連設備の電力量調査 -空調気流調査:サーモカメラによるラック周りの移動撮影 -熱流体解析: 風量計器、温度ロガー計測 |
診断結果(提案) | ・PUEの改善のために -電力ロス改善のため、電力供給方式のHVDCへの変更を提案 -空調気流調整のため、コールドアイルキャッピングを提案 ・PUEは2.2、DPPEは0.74となった |
診断先 | 大連理工大学(東北地方屈指の理工系大学。国家プロジェクトに数多く携わり、国家、地方の経済発展に貢献) |
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診断担当企業 | 三菱電機(株)、三菱電機インフォメーションテクノロジー(株) |
診断概要 | ・エネルギー使用量可視化、運用改善を中心とした省エネ診断 -可視化:図面分析、計測機器設置~可視化システム構築 -分析・施策立案:計測データを、MELGREENで分析し、施策を立案 |
診断結果(提案) | ・消費電力を削減:5,143kWh(31%) -照明:(1)照明間引き、(2)夜間消忘れチェック徹底 -OA:(1)PCの省エネ設定、(2)省エネタップ導入、(3)夜間消忘れチェック徹底 |
診断先 | 共興達信息技術(瀋陽)有限公司(北京のソフトウェアハウス) |
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診断担当企業 | 日本電気(株)、NECフィールディング(株) |
診断概要 | ・オフィスの省エネ診断(PC、照明、サーバ) -プレ診断:オフィス利用状況調査(PC台数・利用機種、照明電力、電気系統) -本診断:電力消費量計測(PC・照明・IT機器)、電力消費削減ソフト(エネパルPC)導入、照度測定 |
診断結果(提案) | ・オフィス全体の消費電力状況を把握し、削減余地を算出 ・省エネ施策を提案 -PC:エネパルPC導入、省エネPCへの切替 -照明:自然光活用、蛍光灯削減 -サーバ:夜間電源オフ |
診断先 | アミティー大学(インド最高峰の私立学校、3つのキャンパス、8万人以上の学生、 3,500人の教職員、130の学科を持つ) |
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診断担当企業 | パナソニック(株)、パナソニック環境エンジニアリング(株) |
診断概要 | ・電力使用比率の高い空調設備周辺を中心に診断 -全体電力使用量の調査 -空調設備の測定(水圧、水温、バルブ、チラー、ポンプ、クーリングタワー) -施設全体の運用状況測定(照明、AHU、ファン、室内温度設定、無駄運転) |
診断結果(提案) | ・設備導入、運転制御、自動運転化等の省エネ効果を算出 -ポンプ廻りのインバータ化で、既存設備比約30%の省エネ -タイマー、センサー制御、人手による無駄運転撲滅で、省エネ効果大 -ポンプ、チラー、クーリングタワーの自動運転化で、省エネ効果大 |
診断先 | UOB アレクサンドラビル(1993年竣工のシンガポールにある商業ビル) |
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診断担当企業 | 山武(株) |
診断概要 | ・商業ビル全体の自動制監視装置、空調設備(チラー、AHU、その他)の更新及び運用改善を目的に診断 -熱源装置に流量計・温度計等・電力計を設置して現状エネルギー使用量 及び運転効率を計測 -熱源発生熱量と電気使用量との比較を実施 -流量計測機能付き制御弁のエネルギー節減効果を計測 |
診断結果(提案) | ・診断結果を受けて、下記施策を提案 -高効率チラーへの入替え -既存BMSをBEMSに入替え -チラー台数制御システム導入 -チラープラントにおける省エネアプリケーションの導入 |
診断先 | ベトナム北部にあるセメント事業者(今回は生産量500,000t×2ラインのうち1ラインを診断) |
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診断担当企業 | (株)日立製作所 |
診断概要 | ・インバータ導入によるファンの省エネに関する診断 - Raw mill fan, Pre-heater fan, Air fanの3台を対象として診断 - 現地調査にて機器特性、現状の運転状況などを調査 - 調査データからインバータ導入時の省エネ効果算出 |
診断結果(提案) | ・3台のファンのうちRaw Mill Fanに対するインバータ制御の省エネ効果が最も大きい(30%程度) ・Pre-heater fan、Air fanについては、風量の適正制御による省エネの可能性あり |
診断先 | 武漢鋼鉄(中国湖北省武漢市の世界5位の製鉄メーカの主要工場) |
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診断担当企業 | 横河電機(株) |
診断概要 | ・焼鈍設備の制御ループ診断実施 -Step1:省エネ効果が期待でき、解析可能なインフラが整備されている工程の選択 -Step2:ITツールで自動データ収集し改善が必要なループの抽出 -Step3:ITツールでループの動特性を解析&理想パラメータによる制御シミュレーション実施 |
診断結果(提案) | ・制御機能の最適化による省エネが可能 -制御定数の調整による変動幅の抑制 -制御定数の調整による制御安定時間の短縮 -設備の保全の必要性 |
診断先 | 主要な省エネ対策 | 対象 | 年間CO2削減ポテンシャル | |
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A) | ベトナム国内データセンタ事業者 | ・ブランクパネル ・コールドモール設置 ・空調機の適正運用(停止含む) |
データセンタの1サーバルーム | ・53.8 [t-CO2] ・99M [VND] / 5,075 [USD] |
B) | シンガポール国内大手企業データセンタ | ・電力ロス改善のため、電力供給方式のHVDCへの変更 ・空調気流調整のため、コールドアイルキャッピング |
データセンタのサーバルーム、熱源室、コントロール室 | ・650 [t-CO2] ・1,297,284 [kWh] ・194,593 [SGD] / 149,686 [USD] |
C) | 大連理工大学 | (水平展開) ・照明間引き、夜間消忘れ確認 ・PC省エネ設定、省エネタップ導入、夜間消忘れチェック徹底 (追加施策) ・空調設定温度変更、ノート型PCへの変更、高効率蛍光灯導入 |
校舎の一部 (約1,000m2、大小約20部屋) |
水平展開: ・31.0 [t-CO2] ・46,293 [kWh]、 追加施策実施時 ・39.4 [t-CO2] ・58,897 [kWh]、 |
D) | 共興達信息技術 | ・PC:エネパルPC導入、省エネPCへの切替 ・照明:自然光活用、蛍光灯削減 ・サーバ:夜間電源オフ |
400m2のオフィス (北京市ビル2階) |
・16.6 [t-CO2] ・22,300 [kWh] ・22,300 [CNY]/ 3,378 [USD] |
E) | アミティー大学 ノイダキャンパス |
改善案15項目を提案 ・ポンプ廻りインバータ化(約30%省エネ) ・タイマー、センサー制御、人手による無駄運転撲滅 ・ポンプ、チラー、クーリングタワーの自動運転化 |
校舎(約4.7万m2)の空調設備・照明設備や熱源設備(チラー、冷却水ポンプ、冷却塔など) | ・1,438 [t-CO2] ・1,648,843 [kWh]以上 ・8,326,656 [INR] / 185,036 [USD] |
F) | UOB アレクサンドラビル | ・高効率チラーへの入替え ・既存BMSをBEMSに入替え ・チラー台数制御システム導入 ・チラープラントにおける省エネアプリケーションの導入 |
商業ビル全体の自動制監視装置、空調設備(チラー、AHU、その他) | ・380 [t-CO2] ・760,000 [kWh] ・167,000 [SGD] / 128,480 [USD] |
G) | ベトナム北部中堅セメント事業者 | ・ファン回転数制御 | 生産量500,000tのライン | ・1,380 [t-CO2] ・2,300,000 [kWh] ・2,518M [VND] / 126,500 [USD] |
H) | 武漢鋼鉄公司 | ・制御機能最適化 ・設備保全 |
工場における冷延工程焼鈍設備 | ・14,519 [t-CO2] (・副次的に、売上貢献、保全コスト削減) |
注:換算係数は、診断先に適切なものを各社が選択した。詳細は以下の通りである。A) 1,103 VND/kWh(通達05/2009/TT-BCT号における工業用新電気料金。送電電圧6kV)。0.6 t-CO2/MWh(Clean Development Mechanism Project Design Document Form CDM-SSC-PDD Version 03)。B) 0.15SGD/kWh。0.5016 kg-CO2/kWh(www.nea.gov.sg)。C) 0.5 CNY/kWh。0.67 kg-CO2/kWh(中国発展改革委員会エネルギー研究所)。D) 1 CNY/kWh(ヒアリング結果)。0.745 kg-CO2/kWh(IEA報告書)。E) 5.05 INR/kWh。0.872 kg-/kWh(インド政府 Central Electricity Authority)。F)0.22 SGD/kWh(JETRO資料)。0.488 kg-CO2/kWh(JBIC資料)G) 1,095 VND/kWh (ヒアリング結果)。0.6 t-CO2/MWh(CDMのPDDを基に想定)。H) 0.58 CNY/kWh(ヒアリング結果)。0.85 t-CO2/1000Nm3(日本の換算係数(環境省作成の「算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧」)より)
省エネ診断ミッションの専門家派遣が一時的なものとならないよう、省エネ診断を受け入れた現地企業の施設責任者、管理者を日本に招聘し、我が国の省エネ先進技術の紹介等を説明すると共に、省エネ診断を担当したメンバー企業の工場や省エネ施設等を訪問することで、現地企業の継続的な省エネへの取組みを促す研修を行った。
【対象者】 | 省エネ診断の対象となる現地受入企業より2名/社 |
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【期間】 | 平成22年 12月7~9日 (到着/出発日を除く) |
【研修内容】 | ・グリーンIT省エネ診断に参加する各社のデモルームや工場等の訪問 ・省エネソリューションや日本の先進的な取組みの実体験 ・省エネに関する意見交換や各種講義 など |
【目的】 | ・現地受入企業が省エネに対する理解を深め、継続的な取組みが実施できるよう支援する。 ・我が国における省エネの取組み及びASEAN諸国での取組みへの相互理解を深め、今後の現地企業と日本企業との連携強化に資する。 |
本年度は、診断実施企業が8社と倍増したことから、研修は対象分野により、4グループに分類して実施した。しかし、実際には、グループ3パナソニックのカウンターパート、グループ4日立製作所及び横河電機のカウンターパートが来日できなかったことから、研修は3つのグループに分かれて実施した。
グループ | 分野 | 日本企業 | 研修受講者の国/都市及び参加人数 |
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グループ1 | データセンタ | IDCフロンティア | ベトナム、ホーチミン(2名) |
NTTデータ先端技術 | シンガポール(2名) | ||
グループ2 | 公共1 | 三菱電機 | 中国、大連(2名) |
日本電気 | 中国、北京(2名) | ||
グループ3 | 公共2 | パナソニック | インド、デリー(不参加) |
山武 | シンガポール(2名) | ||
グループ4 | プラント | 日立製作所 | ベトナム、ハロン(不参加) |
横河電機 | 中国、武漢(不参加) |
日付 | 活動内容 | 場所 | ||
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12月6-7日 | 月-火 | 出発 日本到着(成田/羽田)、ホテルへ移動 | ||
12月7日 | 火 | 15:30-17:00 | 研修1:オリエンテーション | 品川プリンスホテル メインタワー26階「日光」 |
12月8日 | 水 | 終日 | 研修2:診断企業への訪問 グループ1:IDCフロンティア グループ2:三菱電機 グループ3:パナソニック |
診断企業 |
12月9日 | 木 | 終日 | 研修3:診断企業への訪問 グループ1:NTTデータ先端技術 グループ2:日本電気 グループ3:山武 |
診断企業 |
18:30-20:00 | 懇親会 | 品川プリンスホテル メインタワー30階「富良野」 | ||
12月10日 | 金 | ホテルチェックアウト、空港へ移動 帰国 |
日本の省エネ製品やソリューションをASEAN諸国に広く紹介するため、グリーンIT推進協議会の正会員企業から各社が推薦する最新のグリーンIT機器・ソリューションを募集し、「グリーンITベストプラクティス集」(日本語版、英語版)としてとりまとめ、アジア諸国をはじめとする海外で配布した。
平成22年度は、平成21年度掲載した各企業が提案する省エネ製品・ソリューションの一覧に加え、製品の内容や効果について活用事例を追加し、読者の理解を助けることを目指した。
配布したアジア現地の診断先、ワークショップやセミナーでは、日本の最新技術がわかる資料として評価する声を複数頂いた。
また、各社から提供される最新情報を発信するため、ベストプラクティス集ウェブサイトも作成・公開した。このウェブサイトでは、企業名、分類、キーワード等から検索ができます。ご活用願います。
診断実施国を中心として、本事業で得られた省エネ診断の成果、及び我が国のグリーンITに係る事例や「グリーンIT推進協議会」の取組み等を紹介するセミナーを実施しました。
平成22年度は、平成23年3年2月21日と23日に、それぞれシンガポール及び北京において、アジアグリーンITセミナーを開催した。セミナーでは本事業で得られた省エネ診断の成果、及び我が国のグリーンITに係る事例やグリーンIT推進協議会の取組み等を紹介した。
シンガポールでは、現地経済団体であるSingapore Business Federation (SBF) との共催とし、シンガポール政府Infocomm Development Authority (IDA)、現地業界団体 Singapore Infocomm Technology Federation (SiTF)、JETROシンガポールからも後援を得た。
中国では、中華人民共和国工業情報化部、中国電子商会、中国機電製品輸入商会、日本国大使館、JETRO北京センターから後援をいただいた。
両セミナーは共に130名を超える聴講者を集め、セミナー後にも講演者に対し、個別の質問や問い合わせなど、取り組みの紹介に対する反応があった。
また、平成21年度のセミナーでは質疑応答時間、ビジネス面の展開に対する対応が不十分であったため、平成22年度は、現地出席者と講演を行った日本企業が詳細の情報交換をするための商談コーナーを新たに設置した。商談コーナーでは、現地企業からの講演内容に対する問い合わせ等、今後の商談につながる反響があった。
また、中国では、診断相手先企業(大連理工大学、共興達信息技術、武漢鋼鉄公司)に登壇いただき、診断事業の評価についてコメントをいただいた。現地企業の生の声をお伝えいただくことで、地元参加企業の関心が高い様子であった。
平成22年度事業報告書は経済産業省のホームページに掲載されています。
上で記した各事業についての詳しい内容が記載されています。
アジア省エネ診断(平成21年度事業)については
アジア省エネ診断(平成21年度)